公益社団法人 半田青年会議所

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理事長所信

第58代理事長 芳金 秀展

はじめに

正会員が修練を通して自己成長を実現し、奉仕活動により社会への責務を果たし、共に活動する中で生涯の友情を育む。私は、青年会議所こそが唯一無二の地域に根差した人材育成機関であると確信しています。

2020年1月16日、国内で初めて新型コロナウイルスの感染者が確認されました。
中国武漢市から始まったとされる感染症は全世界に拡がり、日本国内にも未曽有の大災害となり、いまだに脅威となっています。その脅威に対し私たちは、自制心や自己判断に基づき自粛要請という世界で最も緩やかな制限で事態の収拾に臨みました。いまだ事態は進行中であり、長期戦を強いられていますが、経済と安全のバランスを取りながら、いかに共存できるかにかかっています。その中で、リモート会議やテレワークなどのシステムの存在が新しい生活様式の働き方を改善する要因となりました。都市で働くことの優位性が低くなり、地方移住や地球環境への改善も見られました。
私たち半田青年会議所も、まちづくりや青少年育成、人材育成を目的とした対外事業の構築に労力と工夫を余儀なくされ、仲間との友情を育む場も制限せざるを得ない状況になりました。羽を奪われた鳥のようにもがき、青年会議所の形を模索しなければならなくなりましたが、抜本的な解決方法が確立されるまでの間は、感染症と上手に付き合いながら活動を継続し、新たな形で発展させていく必要があります。2020年度、SDGsをヒントに新型コロナウイルス感染対策の「コロナ18」を展開できたように、明日の挑戦に向けてのイノベーションを行い、JAYCEEだからこその発想力と行動力でこの危機を乗り越えて参ります。
また私たちの活動エリアは、依然少子高齢化が進んでおり、人口減少社会に向かっています。一部エリアは消滅可能性都市と指定されたままです。さらに外国籍市民の増加など、人口構造が変化しており、ヒト、モノ、カネ、情報のグローバル化、産業構造の変化、新しい生活様式や多文化への対応が急務となっています。
今後とも青年会議所が活動エリアにおいて発展し続けるためには、今こそ会員一人ひとりがリーダーシップを磨き上げ、今まで以上に社会の課題を明確に捉え解決していく必要があります。まちが目指すべき姿を中長期的な視点で想像し、未来に向けて夢を抱き挑戦できる地域を創造して参ります。

例会はメンバーのため、事業は社会のため

例会は、半田青年会議所メンバーが一堂に会し、共に学びあい、一体感を持って運動を進めていくことを確認し、友情を育んでいく大切な場です。近年の例会は、公益社団法人として、組織の公益性を担保するために、対外例会を増やして参りました。例会の目的も地域に対する目的を重要視し、正会員は一般参加者の目線で事業構築をすることで学びを得てきました。しかし、その結果、準備や裏方に徹するメンバーの活動も増えたことによりメンバーの例会参加の目的が十分に達成できず、メンバーの出席率が期待通りにいかなかったこともありました。青年会議所の活動をメンバーにも社会にも、より明確に展開していくために、例会はメンバーのため、事業は社会のためと位置付けて運動を展開して参ります。

夢を抱く想像力と挑戦する技術の習得

人生の活力は明日への希望や未来に対する夢だと考えます。私たちは未来に夢を持っていますか。明日への希望を持っていますか。私たちが住み暮らす知多半島は、海運業を中心に栄えた歴史を持ち、自然豊かな恵まれた土地でありますが、何よりまだ見ぬ新しい世界へ夢を抱く想像力と挑戦する開拓者精神こそが私たちの地域が持つ最大の魅力であると私は思います。「心に描いた通りになる」経営の神様稲盛和夫氏の言葉です。私たちは、今こそ地域に夢を抱き、想像力を持って未来の知多半島を描く必要があります。
また、青年会議所のメンバーは、青年経済人として一流でなければならないと考えています。私たちは活動地域の経済をリードし、持続的な発展を担う経済人の集まりでありますから、未来に対する的確な判断をして、社業や人生を通して社会に貢献しなければなりません。そのためには、地域社会の役に立つという強い志を胸に、高い理想を掲げ、現状とのギャップを正確に把握し、目標に向けて行動していかなければなりません。根性論やがむしゃらな姿勢も大事な一方、結果を出すには知識と技術が必要です。それは上辺だけの知識や小手先のテクニックではなく本質や原理原則に基づいた知識と技術です。地域にも自らの人生にも明確な目標を持ち、確かな知識と技術を習得することで夢を抱き挑戦できる地域を創造して参りましょう。

多様性が生み出す柔軟な組織の拡大

社会の多様性が広がる中、それぞれが持つ価値基準は様々です。私たち青年会議所は社会課題に対し、どのように解決するのかを考え行動する団体であるので、社会に所属するすべての多様性に対し相手の立場に立って考え、気持ちの寄り添える団体でなければなりません。価値基準の多様な社会において、多様な人材、多様な考え方は強みです。積極的にダイバーシティ&インクルージョンを実現して参りましょう。
そして、拡大とは青年会議所の目的を達成する最も効果的な手段であります。半田青年会議所の56年の歴史の中で、毎年必ず行っている運動は拡大のみです。なぜでしょうか。それは青年会議所の目的が、青年への意識改革の機会の提供だからです。
しかし、活動エリアの青年に青年会議所の目的と価値が広く十分に伝わっているとは言えません。私たちの地域には、まだまだ地域に対し、子供たちに対し、なにより自分自身に対し夢を抱いて挑戦している青年が必ずいます。半田青年会議所のメンバー一人ひとりが活動に誇りを持って、地域の青年に青年会議所活動の目的と価値を知っていただき共有することで、能動的な青年の輪を広げ、夢を抱き挑戦できる地域を創造して参りましょう。

夢を抱けるグローバル社会に挑戦できる人材の育成

私は、高校3年生の時にアメリカへの留学を経験させていただきました。そこで得たことは、異文化体験によって世界観が変わり、日本人であると同時に地球市民であるというアイデンティティを確立できたことです。しかし、近年留学を経験する学生数は減少の一途を辿っています。国際空港を持つ知多半島であっても、留学は身近なものではありません。さらに私は、真のグローバル人材に必要な素養のひとつとして、生まれ育った故郷やルーツに対するアイデンティティが確立している人材であることが必要だと考えます。アイデンティティとはつまり「自分」です。グローバル社会では、自分とは何なのかを表現できなければ通用しません。世界のグローバルエリートは、自国のことを語ることができます。生まれ育ったまちと、家族のルーツや歩んできた道に誇りを持っています。私たちは郷土や家族、自分自身に誇りを持って生きていますでしょうか。私たちの活動エリアには数多くの偉人や誇れる歴史がありますが、関心が低いのが現状です。
日本は地政学上、世界との間に壁を感じやすい国です。しかし、私たちが住み暮らす地域にも既にグローバルの波は押し寄せています。物理的な物の移動にかかわらず、情報は既に国境などありません。だからこそ短期の旅行では経験できない、長期的な異文化体験によって世界観を広げ、グローバルな視点で物事を見なければなりません。また地域のルーツを知ることで「自分」に誇りを持ち、グローバル社会の中で基礎となるアイデンティティを持たなければなりません。そんな機会をこの地域に住む若者に提供し、この知多半島からグローバル社会の中で挑戦できる人材を育成して参りましょう。

未来に向けて挑戦できる持続可能な地域の創造

私たちが住み暮らす地域は、産業構造に大きな変革が起こりにくい状況にあり、持続可能性が不安視されています。また新型コロナウイルス感染症の影響により、観光業に大きな影響が出ています。地場産業の構造的課題を抱え、将来の見通しが決して明るくない中ではありますが、多様な自然環境に恵まれ、半島という特性や歴史的財産、世界に開かれた国際空港があり、さらに日本福祉大学を始めとする各種専門性の高い学校や公共施設が立地していることなどを踏まえ、従来の地場産業と知多半島のポテンシャルを組み合わせた、新たな高付加価値ビジネスモデルへ挑戦することで持続可能な地域を創造して参りましょう。

人の心に届くビジュアルデザインへの挑戦

新型コロナウイルス感染症の影響により、テレワークやリモート会議などその場に一緒にいなくてもコミュニケーションが取れたり、プロジェクトを進行したりすることが当たり前になりました。また、従来の活字によるコミュニケーション、対面してのプロジェクト進行に加えて映像の活用が、働き方や人のつながり、また広報の可能性を格段に広げました。従来の紙媒体やホームページを中心とした情報発信は、信頼性や内容の詳細を正確に届けることに優れています。今後はさらに、感動や共感などストーリーを伴った心に届く情報を発信していく必要があります。特に情報過多と呼ばれる時代に、一過性の情報は溢れ返っています。私たちは、こんな時代だからこそ、双方向で人の心に届く新たなビジュアルデザインの構築をしなければなりません。情報のスピードと頻度、発信の多角化と拡散性を高めることで、半田青年会議所のブランディングや広報に活かして参りましょう。

持続可能な新たな公益活動への挑戦

2020年度、突如現れ私たちの生活を一変させた新型コロナウイルス感染症。私たちは目に見えないウイルスと戦い続けています。基本的な予防措置、3密を避けての活動、人の営みの基となる経済活動を行いながらWithコロナの態勢で日常を送っています。しかし、多様なメディアが発信する情報に一喜一憂し、行き過ぎた反応は個人を攻撃するなど、恐れる対象がウイルスより人になる事態が起きていますが、有事の際の連帯感や自己犠牲の精神は日本人として世界のモデルとなっています。経済も3密を避け、新たなビジネスモデルも生まれています。持続可能な状態とは、環境が整い、経済が安定し、社会に価値が認められている状態です。公益社団法人半田青年会議所として、ピンチをチャンスと捉え、持続可能な新たな公益活動の形を社会に提案して参りましょう。

当事者意識を持つ主権者教育の推進

主権者とは、国の在り方について最終的に判断する権限を持つ人のこと。つまり日本では国民です。しかし、国家や社会に対しての主権者である前に、一人ひとりの国民が自らの人生におけるリーダーでなければなりません。自らの頭で考え行動し、結果に対して責任を負う。その上で、家族や組織、社会を構成する多くの人々の中で何を為すべきかを考え行動することが大切です。
人生に夢を持ち、目標に向かって地に足をつけ日々努力しているからこそ、周りの人々にも心を向けることができます。知識を蓄え判断のものさしが整っているからこそ、住み暮らす地域に対しても、未来を想像し必要な判断ができます。主権者教育とは、自ら判断し、行動できる人を育てることにほかなりません。当事者意識を持って社会課題に対し、的確な情報と議論を通じ、合意形成を図ることのできる社会の構築に向けて主権者教育を推進して参りましょう。

持続可能な組織の構築

2019年度、私たちは活動エリア内の自治体と社会福祉協議会の三者間で防災協定を締結しました。南海トラフ巨大地震や津波被害のリスクなど、この地域に起こりうる災害の被害をいかに減らし、耐え、どう立ち直るかが問われています。そのためにはハード整備はもちろん、災害の発生する前、発生時、発生後、それぞれの段階による組織的な備えが必要です。災害に対して正しい知識を持って正しく行動すれば被害を最小限に抑えることができます。またBCPを策定することで、青年会議所のネットワークやポテンシャルを存分に活用し持続可能な組織を構築することができます。
青年会議所は時代の変化を先読みし、常に新しい概念を提唱してきました。既に叫ばれて久しいSociety5.0、新型コロナウイルス感染症によって導入が推進されたリモート会議など、デジタルとアナログの融合を実現した青年会議所の組織運営を構築する必要があります。また、組織としての様々なルールを抜本的に検証し、私たちの活動が持続可能なのかどうかを未来志向で課題を抽出し、時代の変化を牽引する組織改革に挑戦をして参りましょう。

結びに

夢を抱くためには明日がなくてはなりません、挑戦するためには今日がなくてはいけません。私の夢は世界中の人々が当たり前のように明日を迎えることができることです。すべての人が明日に夢と希望を抱き、そのために今日という日を一生懸命に生きて、挑戦できる地域であること。これが私の理想とする地域の姿です。
現代、日本社会は幸せの形が多様であり、何をものさしに、どこを目指して生きていけばいいのかわかりにくい世の中であると思います。しかし、どんなに辛くても、苦しくても、生きてさえいれば無限の可能性を秘めた未来はやって来るのです。特に私たち青年世代は力強く前を向いて、自らの夢に向かって挑戦しなければなりません。その情熱と行動力が多くの人の心に届き、火をつけるのです。
私たちは、今のままではいけません。社会に対し、未来に対し満足していてはいけません。いつまでも理想を追い求め、たゆまぬ努力と学びを繰り返し、自らを高め、夢を抱き、挑戦できる地域を創造して参りましょう。